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超音波吸引法の登場とその器械の進歩、小切開手術の導入、折りたたみ眼内レンズの普及などによって、白内障手術は短時間で簡単にすむ痛くない手術、という感覚が特に患者さんの間に広まっています。手術を受けた人から話を聞いて「お前もやってみたら」「私もやってみようか」といったノリで受診する方も珍しくありません。 |
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しかし、実際には眼球という本来は閉鎖されているべき組織に穴を開け、内部構造を変えてしまう手術ですから無害で済むわけがありません。昔に比べればはるかに合併症は減りましたが、感染性眼内炎や眼圧上昇などの術後早期に起きる派手な合併症はもちろん、術後長期にわたって地味に 眼疾患のリスクが増す可能性も依然として存在しています。 |
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米、ミネソタのオルムステッド群の住民全員を対象 に、1980年から2004年の24年間の間に白内障手術を受けた7,137例10,256眼の術後経過を調査し、網膜剥離の発生率を報告した論文を紹介します。網膜剥離は裂孔原性のみを対象とし、裂孔がないもの、滲出性、牽引性の網膜剥離は除外されています。白内障の術式は時代を反映しており、1980年では91%が嚢外摘出法、超音波吸引法は0%でした。残りは嚢内摘出で す。逆に2000年においては嚢外摘出法は1%に満たず、99%が超音波吸引法で行われています。 |
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網膜剥離の20年間での累積発生率は1.79%であり、同地域の白内障手術を受けなかった対照群における0.44%に対して約4倍 という、有意に高い結果となりました。また、発生率は最初の1年では0.27%、以下5年ごとに0.71、1.23、1.58、1.79%と、10年ごとに1/1.6に低下しながら累積しています。 しかし、術後5年以上経過してからの発生も全体の29%を占めており、5年経過すれば安心とは言えません。男性の網膜剥離発生率は女性の約2.9倍で統計的にも有意な差がありました。 |
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意外なのは術式による差で、嚢外摘出法と超音波吸引法の間で網膜剥離発生率には有意な差がありませんでした。嚢外摘出は眼圧が一旦ゼロになる上、眼球の変形も 大きいですから、網膜剥離が増えて当然という気がするのですが、あるいは嚢外摘出の方が時間が短くすむ、超音波吸引でも手荒くやれば眼圧変動や変形が生ずるといった事情があるのかも知れません。 |
| 術後網膜剥離の危険因子は、他に60才未満での白内障手術、近視、長い眼軸長、後嚢破裂となっています。 後嚢破裂を生じた9眼のうち6眼は1年以内に網膜剥離を生じていますが、YAGレーザーによる後発白内障切開は有意な危険因子となっていません。嚢外摘出後の網膜剥離は術後1年以内に多発しますが、以後は超音波吸引法より少なくなる傾向がありました。 |
| 以前YAGによる後発白内障切開が術後網膜剥離の危険因子という報告を見たことがあるので、後発白内障切開をせざるを得ない臨床医としては少し 安心しましたが、 いずれにせよ、今でも白内障術後はやはり網膜剥離等の合併症のリスクが増し、術後5年以上経っても注意と経過観察が必要なことに変わりはないということのようです。 |
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出典は、Erie JC et al.: Risk of Retinal Detachment after Cataract Extraction, 1980-2004: A Population-Based Study. Ophthalmology 113: 2026-2032, 2006 です。 |
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