|
今回紹介するのはオーストラリアのシドニー、Blue Moutains地区の住人を対象とした疫学調査の一つです。白内障、黄斑変性など多くの調査が行われていますが、今回紹介するのは緑内障治療と心疾患による死亡との関連を調べたものです。 |
|
これは1986年から1994年の間に Lee DJらが行った「National Health Interview Survey」調査による「緑内障患者は心疾患その他による死亡率が50%上がる」との結果を受けたものです。対象となったのは同地区の49才から97才の住人3644名。1992〜1994年を観察開始時期とし、2002年1月を集計時期として、緑内障診断の有無、治療方法、心疾患による死亡の有無などを調査しています。 |
|
調査期間中、873例が死亡し、そのうち312例は心血管疾患によるものでした。緑内障と診断されたのは全観察対象のうち108例。年令等による補正を行った結果、同期間中の死亡率は緑内障患者で24.3%、それ以外で23.8%と差がなかったものの、心血管疾患による死亡率は緑内障患者で14.6%、それ以外で8.4%と、統計的に有意ではないものの、差が認められました。75才以下に限ると、緑内障患者はそれ以外の2.5〜2.8倍の有意な死亡率増加を示しました。ただし75才以下の心血管疾患による緑内障患者の死亡数は6例と少ないため、真に有意であるかどうかは微妙なところです。 |
|
観察開始時期にすでに緑内障と診断され、チモプトールを点眼していた例だけに限ると、年令制限なしでも死亡率の差は有意となり、心血管疾患による死亡率はそれらの症例において80%程度上昇していました。ただ、開始時期に緑内障の診断を受け、チモプトールを使用せずに他の治療薬を使用していた例は少ないため、チモプトールによるものか、単にその時期にはチモプトールが主に使用されていたからかは不明です。 |
|
Editorialでは、統計処理の方法によって有意性が変わること、チモプトールは心血管疾患の治療薬として使用されており、死亡率を下げることが多くの調査で証明されていることなどから、この結果をチモプトール点眼の危険性と解釈するのは問題がある、としています。著者も全死亡率では緑内障患者とそれ以外の間に差がないことを指摘しています。 |
|
1999年に発表されたFramingham 調査でも高眼圧、あるいは緑内障治療中の人について、それ以外の人より50%程度高い死亡率が報告されています。高眼圧、あるいは緑内障と診断され、長期間生活していれば精神的なストレスもあるでしょうし、定期的な点眼、通院、検査だけでも負担になります。私もこの結果がチモプトール点眼、あるいはベータブロッカーの危険性を示すとは考えていません。進行した緑内障では生活上危険を感じることも多いですから、それらの肉体的、精神的ストレスを反映した結果と考えるのが今のところ妥当ではないでしょうか。 |
|
出典は、Lee AJ et al.: Open-Angle Glaucoma and Cardiovascular Mortality. -The Blue Mountains Eye Study- . Ophthalmology, 113: 1069-1076, 2006 です。 |
|
|
ホームページに戻る |
|
眼科ニュースの目次に戻る |