PKD:色素と光線による角膜切開接着

縫わずに創口閉鎖。ウサギを用いた実験結果

  角膜切開創の閉鎖は、従来は縫合によって行われていました。白内障手術は小切開手術によって自己閉鎖創を形成し、無縫合で終えることが普通になっています。しかし、切開を拡大した場合は縫合が必要になりますし、角膜移植では縫合が必須。また外傷などによる角膜裂傷もたいていは縫合が必要となります。
  角膜縫合糸はそれ自体が感染やGPCの原因になりますが、同時に縫合が緩すぎれば縫合不全の、きつすぎたり不均等だったりすると角膜乱視を起こします。特に角膜中央部付近の裂傷を縫合すると強い乱視を生じます。縫わずに確実に角膜を接着できればこれらのトラブルを解消することができます。
  瞬間接着剤(アロンアルファ)の 類は使用方法が難しく、また刺激があります。フィブリンを使用した生体接着剤は数日で吸収されてしまい、また原材料に対する反応や感染も考慮する必要があります。レーザーによる熱接着では周囲組織のダメージと共に、瘢痕形成による混濁、乱視の発生が問題になります。
 今回紹介する論文では、色素とレーザーの組み合わせを用いることによって、周囲へのダメージがない、きれいな接着創を作ることに成功しています。対象はウサギで、角膜切開創を作り、ローズベンガルを創口に塗布した後、アルゴンレーザーを照射して接着し、接着強度と創傷治癒過程を観察しています。
  幅3.5mmの角膜切開を加えた場合、無処置では眼球内に数十mmHgの水圧を加えただけで創口からリークが生じたのに対し、PKD(Photochemical KeratoDesmos)処置眼では、レーザー照射時間によって200〜500mmHgまでの水圧に耐える結果 が得られました。接着機序は、レーザー照射によって色素からラディカルが生じ、これが化学的結合を生むのだろうということです。
 長期観察では、創部への血管新生、創部の限局的混濁が認められていますが、これはウサギでは人眼より強い反応が生ずることと、術後ステロイドを点眼していないためだろう、と著者はコメントしています。人眼への応用はまだまだこれからでしょうが、縫合糸による乱視が生じず、接着時に照射の調整などによって乱視のコントロールが可能であれば、角膜移植後のコンタクトレンズ処方に悩まずにすむのかも知れません。
 出典は、Proano CE et al. : Photochemical Keratodesmos for Bonding Corneal Incisions. Invest Ophthalmol Vis Sci: 2177-2181, 2004

 

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