眼内弱視レンズ

拡大鏡つき人工水晶体

  加齢黄斑変性などのために黄斑機能が低下した場合、通常の眼鏡では視力が出ません。このような場合、弱視鏡、あるいは拡大鏡といった補助手段によって像を拡大し、解像力の低下した黄斑部でも文字や人の顔を識別できるようにする方法があります。これを眼内レンズに組み込むことによって、分厚い弱視鏡を使用しないですむようにする、というのが今回紹介する論文です。
  IMT (Implantable Miniature Telescope)というのがその眼内レンズの名称です。眼内レンズ状の器具で、水晶体嚢内に固定するためのPMMA製のループを持ち、光学部はガラスとプラスティックで構成され、眼前50cmにフォーカスが合うよう調整されます。光学部は一部中空とすることによって浮力を得てガラスの重量を打ち消し、全体の重量を半減させます。当然手術時には水晶体の内容は摘出します。
  挿入した状態で、IMTの光学部は瞳孔から前方に少し(0.1mm〜0.5mm)突出し、角膜内皮とのクリアランスは2mm程度となります。角膜レンズと共働して、IMTは12度の視野に相当する部分を網膜上の36度 の範囲に投影し、結果として通常の3倍に拡大された像を映し出します。IMTは片眼使用が前提であり、他眼が周辺視野を提供することになります。
 このIMTの第一相試験は60才以上で両眼とも矯正視力が0.25以下、0.05以上の加令黄斑変性患者を対象として15例15眼に行われました。また術前に弱視鏡使用による視力改善が認められた目だけが対象となりました。IMT挿入のため、水晶体摘出時あるいは摘出後、120〜160度の輪部切開が行われました。1例では後嚢破裂が生じたため、中止され、挿入されたのは14眼です。
 結果は、術後3、6ヶ月において、半数の症例で遠見矯正視力が2段階以上改善しました。これは1年後にも安定していました。近見視力は術後3〜12ヶ月において約半数が同じく2段階以上改善していました。内皮細胞減少率は術後3ヶ月で6.7%、術後6、12ヶ月では約13%とやや大きな数字になっています。
 特徴的な合併症は術後1ヶ月以上経過してから起きた眼内炎症で、14例中6例に発生していますが、いずれもステロイド使用で治癒しています。著者らはIMT挿入術後にはステロイドのテノン嚢下注射や長期間のステロイド点眼が必要ではないかとコメントしています。
 まだ第一世代ではありますし、術式も含めていろいろと困難がありそうなIMTですが、光学部になんらかの調節機能を持たせることができれば、拡大と通常視野の使い分けなどの発展もあり得るかも知れません。
 出典は、Lane SS et al. : A Prospective Multicenter Clinical Trial to Evaluate the Safety and Effectiveness of the Implantable Miniature Telescope. Am J Ophthalmol 137: 993-1001, 2004

 

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