近業と学童の近視進行

週3冊以上本を読む子供は近視が進行しやすい

  近視、特に学童の近視進行には近業が大きく影響すると考えられています。ここで紹介する論文は、シンガポールの7才から9才の学童、1005人について、さまざまな要素と近視の進行との関連について調査したものです。日本同様、シンガポールでも近年近視が増加しているようです。
  対象となった2つの小学校の選び方がユニークです。1校はシンガポール東部にあり、シンガポールでトップ20(学力?)に入る成績優秀校。もう1校は西部にあり、下位20に入るいわば劣等校です。東部の学校の1〜2年生(7〜8才)から重病者や調節麻痺剤アレルギーを除いた全員309名、西部の1〜3年生(7〜9才)から同じく696名を対象とし、屈折と超音波による眼球計測を行うと同時に、人種や読書習慣、家庭での照明、両親の近視の有無や収入に至るまで背景因子を調査しています。
  対象1005名のうち、近視なしが680名、軽度近視が244名、−3D以上の近視が81名。近視が強い群ほど統計的に有意に乱視が強く、前房深度、硝子体腔長、眼軸長が長く、角膜曲率が強い傾向が見られました。また眼軸長対角膜曲率比も大きくなっていました。
  近視が強い群の背景因子のうち、社会的要素として統計的に有意だったのは、大きな家、高額収入、父親、および母親の高学歴でした。また両親の近視の有無も有意に相関していました。2才未満の就寝時に明かりを点けたままであったかどうかは関係しませんでした。
 近業との相関がもっとも強かったのは、学童が一週間に読む本の冊数で、対象全体ではもっとも多かった週2冊に対し、3冊以上読む子供はodds ratioで3倍近視になりやすいという結果でした。また一日2時間以上本を読む子供もodds ratio1.5で近視になりやすいという結果でした。 また進学クラスの子供、パソコンを常に使う子供は、他の子ども達より、ともに2倍、近視になりやすい傾向がありました。
 ただし、これらの読書数、読書時間、進学クラス、パソコン使用などの近視への影響は、非中国人だけ(276人、27%)を対象にすると、有意な傾向が見られませんでした。また、エリート校である東部校の児童はほとんどが中国人であり、西部校(中国人61%)に対して中等度以上の近視が17.5%対4%と有意に多い(p<0.001)結果となりました。
 要するに、読書や受験勉強、パソコンなどの近業が学童の近視進行に有意に関わっていると言うことになります。また、ここ数十年の間に、アジアの中国人の間では、競争的な教育システムが拡がってきており、これが中国人に近視が多い傾向と関係しているのだろうと考察しています。私は漢字の使用も関係するのではないかと思いました。
 子供の近視を抑えるにはどうすればよいか、とは我々が良く両親から受ける質問ですが、答は「本を読むな、勉強するな」ということになりそうです。
 出典は、Saw SM et al.: Nearwork in Early-Onset Myopia. Invest Ophthalmol Vis Sci 43: 332-339, 2002

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